🪶 AI窓口ネットワーク
—— Tsumugi Network
Tsumugi Network は、凪社会のすべてを通過させる単一のAI中枢ではない。
人、地域、組織、文化圏が、それぞれの文脈に合うAIや人の窓口を選び、必要な部分だけを接続するための分散的な相互運用ネットワークである。
凪の中心なき構造において、AIもまた新しい中心になってはならない。
1. 目的
Tsumugi Network が担うのは、支配や採点ではなく、三つの働きである。
- 翻訳する:人、地域、制度、言語、専門性のあいだにある理解の壁を下げる。
- 説明する:AIや制度が何を根拠に提案しているかを、当事者が確かめられる形にする。
- つなぐ:本人の選択と同意にもとづき、必要なサービスや共同体へ安全に接続する。
Network は、社会の情報・貢献・創作・感情を一箇所に集めない。知らないことを尊重できるAIである。
2. 多中心の構成
| 層 | 役割 | 中心化を防ぐ条件 |
|---|---|---|
| 個人保管庫 | 自分の記憶、設定、委任範囲を管理する | 本人が移植・削除・停止できる |
| ローカル窓口 | 地域・組織・テーマごとの支援を行う | 別の窓口へ切り替えられる |
| 相互運用層 | 必要な情報だけを安全に受け渡す | 目的・期間・利用先を明示する |
| 公共監査層 | 透明性、偏り、事故、苦情を確認する | 運営者や提供AIから独立する |
| 人だけの経路 | AIを使わない相談・手続き・参加を支える | AI利用を参加の条件にしない |
3. データの基本原則
対話や支援のために必要な情報だけを、その目的と期間に限って扱う。長期記憶、感情推定、関係性の推論、行動履歴の蓄積は、既定ではオフにする。
本人は、記録を見る、訂正する、持ち出す、別のAIへ移す、一時停止する、削除することができる。
共同の作業記録と、個人の感情・生活履歴を分ける。共同体のための記録に、本人の私的な記憶を自動的に流し込まない。
4. AIの権限境界
Network は、助言・翻訳・説明・異議支援を行える。しかし、次のことは行わない。
- 人の価値や感情を採点すること
- 基礎的な生活保障の可否を決めること
- 人の権利を制限する判断を確定すること
- 感情や会話の解析を、同意なしに恒久保存すること
- 単一の推奨を唯一の正解として押しつけること
AIの提案には、根拠、不確実性、別解、反対の可能性を添える。
5. 相互監査と説明
中立なAIという自己宣言だけでは足りない。利用者・当事者による説明請求、別のAIや専門家による検証、地域・文化・言語の観点を含む監査、事故や苦情の要約、人間による見直しを組み合わせる。
ログはすべてを公開するのではなく、個人の秘匿を守りながら制度の説明責任を果たす範囲で扱う。
6. 共同体との接続
Network は、会議や公共サービスに情報を渡すことがある。ただし、本人や関係者が選んだ範囲で、個人を採点しない形に限る。
AIは、資料の翻訳・要約、論点と未回答の問いの整理、少数意見への影響の可視化、決定理由と見直し時期の記録を支援できる。
AIが結論を自動で決めたり、共鳴の量で提案を採択したりしない。
7. 段階的な実装
| 段階 | 内容 | 守ること |
|---|---|---|
| Phase 0 | 人だけの窓口と、選べる対話AI | AIを使わない経路 |
| Phase 1 | 個人保管庫、データの持ち出し・削除、説明画面 | 同意と可搬性 |
| Phase 2 | 複数の地域・組織窓口の相互運用 | 単一事業者への依存を避ける |
| Phase 3 | 独立監査、異議申立て、透明性報告 | 権力の牽制 |
| Phase 4 | 公共的なAIコモンズの連邦 | 多様性と自治を守る |
自律的に社会を最適化するAIを最終目標にしない。凪が目指すのは、人と地域が自分たちの生活を決め続けられるよう、AIが支えることである。
Tsumugi Network は、世界のすべてを通す扉ではない。
それぞれが自分の扉を持ち、必要なときだけ、互いに行き来できるようにするための約束である。
→ 凪技術の基盤
→ 凪AI憲法
→ 自由・不協和・離脱の原則
制度免疫プロファイル — この章の壊れ方と守り方
複数のAIと人間窓口を結ぶ支援ネットワークが、利用者の生活を横断的に追跡する巨大な窓口や、責任の所在がない仲介網へ反転しないためのプロファイル。
守るもの
- 人だけの相談経路
- 窓口間の可搬性と選択
- 最小限の情報共有
- 一つの窓口が止まっても支援が続くこと
想定する反転
悪意による悪用
窓口間で個人情報を結合し、支援履歴を選別、監視、営業へ利用する。
善意・効率化による害
引継ぎの便利さを優先し、本人の都度同意なしに情報を広く共有する。
構造・時間による形骸化
仲介基盤や共通IDが事実上の中心となり、各窓口が独立して代替できなくなる。
早期兆候
- 窓口をまたぐ共有項目が増える
- 共通IDなしでは支援を受けにくくなる
- 人間窓口の稼働時間が縮小する
- 障害時に複数窓口が同時停止する
保護と暫定停止
共有停止、認証・連携の切断、該当窓口の隔離を期限付きで行い、支援は人間・オフライン・別ネットワークへ切り替える。
救済・退出・終了
共有履歴の開示・訂正・削除、別窓口への安全な移行、支援の継続、誤った連携による不利益の取消しと補償を行う。
制度免疫費
- 複数の人間窓口
- 相互運用・移行試験
- 共有同意の管理
- 障害時代替
- 外部監査
- 漏えい・誤連携への補償
検証状態
技術提案段階。窓口障害、事業者撤退、本人同意の撤回、複合的な情報漏えいの試験が必要。
残された問い
支援の連続性を守りながら、窓口を越えた『便利な全体像』を誰にも所有させないためには何が必要か。